
PREVENTIVE DENTISTRY 予防歯科について
予防歯科は、歯周病やその他の口腔疾患の問題が起きてから治療するのではなく、問題や疾患が起こる前に防ぐための取り組みです。
人の場合は3ヶ月に1回程度の歯科検診とクリーニングがお勧めされていますが、犬猫では全身麻酔が必要なため、3ヶ月に1回の処置を生涯続けることは現実的ではないと考えられるため、必要な場合以外は、1〜2歳以降で定期的に、1年に1回程度のクリーニングをすることが、米国獣医歯科専門医協会(AVDC)のガイドラインで推奨されています。
毎日のホームケアと定期的な動物病院でのメンテナンスを組み合わせることで、健康な歯を長く保つことができます。
予防歯科が大切な理由
歯周病のリスクを減らせる
犬猫の多くは1歳頃から歯周病の徴候が見られます。早期ケアで進行を防げます。
歯を抜かずに温存できる可能性が高まる
治療とホームケアを両立すれば、不快感なく口腔の機能を維持できる期間を長くします。
全身の健康を守る
歯周病菌は血流に乗って心臓や腎臓などに悪影響を及ぼすことがあります。
生活の質を保つ
痛みや口臭を防ぎ、好きな食事をおいしく食べられる時間を長く保てます。
医療費や通院回数の軽減
予防ケアは治療より体への負担も経済的負担も小さくすみます。
2歳で初めてのクリーニングをお勧めします
シニアになる前にと5〜7歳で初めてのクリーニングを考えて受診するご家族も多いです。確かにシニアになる前に備えていただくのはとても良いことなのですが、そのような年齢になると、実はすでに、1本以上抜歯が必要な重度な歯周病に進行していることが多いのです。
そのため、歯を守るためには、特に小型犬の子では2〜3歳での最初の歯科クリーニングをお勧めします。
「若いからまだ平気」ではなく、若いからこそ守れるのが歯と骨の健康です。一度進行してしまうと、高度な歯周外科を行なっても、歯周病で失われた歯と骨を完全に戻すことはできません。
2歳での麻酔下歯科クリーニングは、将来の抜歯や痛みから大切な家族を守るための“最大のチャンス”です。麻酔という言葉は不安になるかもしれませんが、その子の全身状態をチェックし、安全に最大限配慮しながら処置を行いますので、まずはご相談ください。
歯周病治療については、歯周病治療の方法は?をご覧下さい

HOME CARE ホームケア(歯磨き)について
動物の歯は、治療をする獣医師だけでなく、日々の飼い主さんのケアが非常に重要です。「動物病院での適切な定期メンテナンス」と「毎日のホームケア」の両輪で、愛犬・愛猫の歯を守りましょう。
歯磨きが難しい、動いてしまってできない、歯ブラシを見ただけで怒る、歯磨きガムが好きじゃない・・・いろんなお悩みがあるかと思います。
ただ、「愛する我が子のために何かしてあげたい」、そう考えたときにしてあげられる大切なケアは毎日の歯ブラシです。その子その子の悩みがあり、すぐに解決するものではないかもしれませんが、少しずつ解決していきましょう。
当院では、丁寧な口腔検査とわかりやすい説明を心がけ、その子やそのご家族に合った予防・治療計画をご提案していきます。一緒に歯磨きをがんばってみませんか?すでに歯磨きされている方も、プロの目で見た、歯周病予防のための歯磨きの仕方や使用する道具の選び方もお気軽にご相談ください。
ホームケアの方法
毎日、犬猫専用の歯ブラシや歯磨きペーストでケアしましょう。慣れていない子は少しずつ練習していきます。まずはお口を触る練習から始めて、嫌がる前にご褒美をあげるなど、少しずつ慣らしていきましょう。
無理強いは禁物です。詳しい方法については、当院にお問い合わせください。
歯磨きは、永久歯が生え揃ったら開始するのが良いとされていますが、その前の乳歯の時期からもお口を触られるのが好きになるよう、おやつなどで慣らすことが大切です。その他、おやつやおもちゃ、食事でホームケアの効果を補助することができます。おやつ・食事の工夫
硬すぎるガムや骨、蹄、角、おもちゃは1分間であっても歯の破折の原因になるため避け、歯に良い効果のあるフードやおやつを選びましょう。
水分補給と咀嚼
水をお皿などから多く飲む習慣をつけることは口腔内環境を整えます。
サプリメントも、それだけでは歯周病予防の効果は低いですが、ホームケアと合わせて使うことで、有効な場合もあります。歯ブラシと一緒に使いましょう。

DENTAL CHECKUP 歯科検診について
(ベビーの時からシニアまで定期的に受けることがお勧め)
成犬になってからはもちろん、ベビー(子犬・子猫)の時期からの歯科検診は、健康な歯と快適な生活を守るためにとても大切です。永久歯が生え揃うまで毎月1回の受診がお勧めです。生えそろったあとは、歯磨きの状況次第ですが、長くても3〜6ヶ月に1回の受診を推奨しています。
特に成長とともに判明してくる、不正咬合(かみ合わせの異常)、乳歯遺残(抜けるはずの乳歯が残ること)、埋伏歯(歯が正しい位置から生えてこないこと)がある場合は、若いうちから歯科検診を受けることが将来のトラブルを防ぐ鍵になります。
また、1頭1頭違う歯並びを歯科検診でチェックし、歯磨きの仕方で注意することなどを、ご家族と共有することで、より効果的な歯周病予防が可能になります。
定期的な歯科検診を
お勧めする理由早期発見で適切な処置ができる
不正咬合や乳歯遺残、埋伏歯は放置すると歯並びの乱れや歯周病のリスクが高まります。
若いうちに見つけて矯正などの治療をすれば、歯の健康を長く保ちやすくなります。痛みやトラブルの予防につながる
ずれた歯並びは口内に炎症や違和感を生み、食事のしにくさや、歯周病の原因にもなります。
早期のケアや、それを踏まえた歯磨きで痛みや不快感から守れます。将来の治療負担を軽減できる
問題が深刻になる前に対応することで、抜歯や外科的な処置など大がかりな治療を避けられる可能性が高まります。
愛犬愛猫の生活の質を守る
健康な歯と口はおいしく食べる楽しみや元気な毎日の基本。歯のトラブルでストレスが増える前にしっかり見守りましょう。
小さなうちからの歯科検診は、ペットの健康を守るための大切な習慣です。「まだ大丈夫」と思っていても、不正咬合や乳歯遺残、埋伏歯などは気づかないうちにトラブルが進行することもあります。
早めの検診で問題を見つけて、痛みやトラブルのない快適な生活をサポートしましょう。
当院では、やさしく丁寧な歯科検診を行い、飼い主さまにもわかりやすく状況をご説明します。気になることがあればぜひお気軽にご相談ください。
TOOTH EXTRACTION 抜歯するのが良いか
しない方が良いか?
「できるだけ歯を残す」ことが基本方針ですが、重度の歯周病や顎骨破壊がある場合、抜歯は命や健康を守るための最終手段となります。治療の基本は、「歯を抜くから悪い、歯を残すから良い」 という単純なものではなく、その子の体調や生活をしっかり考えて、適切な処置を行うということです。
また、処置をして終わりではなく、一生涯にわたり経過診療していくことが大切だと当院では考えています。
必要な抜歯を行わずに放置すると、骨折や、膿、強い痛み、食欲不振、全身疾患の悪化など、深刻な問題を引き起こします。目先の治療だけではなく、その子の数年先や10年以上先まで考えた治療を行うことが、その子にとっての幸せや健康につながると当院では考えています。
愛犬愛猫が痛みなく健康に暮らせることを最優先に考え、適切な治療を適切なタイミングで行うようによくご相談していきましょう。